資金ショート寸前の会社の「経営改善」

当事業所にて、「資金ショート寸前の会社」に対して経営改善を支援した事例を紹介します。

当事業所は、基本的には「事業者さまのIT環境構築」を事業の中心に添えていますが、中小企業診断士として企業経営全般を支援する実績も重ねているので、「IT」といった話題に限らず総合的に事業者さまの支援を行うことを可能としています。しかしながら、今の世の中は「経営」と「IT」を切り離して考えることはナンセンスですので、結果として、当事業所は「ITというアプローチを駆使した効果的な経営改善の支援」というものを実現可能としております。

ここでは、縁あって出会った事業者さまと顧問契約を締結し、いわゆる「経営コンサルタント」や「顧問」の立ち位置で支援を実施した事例を紹介します。

目次

事業者さまの状況

出会った当初の事業者さまは、様々なトラブルに巻き込まれて経営環境が悪化してしまい、売上を大きく減らして赤字を拡大している状況でした。

この状況で、「銀行から新規借入をし、設備投資をする。その設備投資を通じて、失注を防ぐ形での受注拡大を狙う」との希望で、当事業所に「銀行融資の支援」を依頼してこられました。

現状を正確に「見える化」

ご要望に従い、銀行へ借入を申請するためには、銀行に対して自社の現状や、設備投資の狙いなどを正確に説明する必要があります。

そのため、「資金繰り表」(+事業計画書)を作成することになりました。

「資金繰り表」を作成してみると…?

当事業所として昨年度以前の決算書類を拝見していた中で、「資金繰り状況は非常に厳しいだろう」ということは既に分かっていました。

しかし、実際に「資金繰り表」を作成して資金繰り状況を明確に見える化してみると、なんと「数か月以内に資金ショートする」という可能性が濃厚であることが判明しました。

「新規借入」が銀行から認められる状況ではない!

数か月以内に資金ショート即ち倒産し、まったくお金を返済することが出来なくなる会社に対して、銀行が簡単に融資をしてくれる訳がありません。

そこで、当事業所として、事業者さま(代表者や経理有識者など)と何度も何度も会話を重ね、以下の対応を実施することとしました。

  • 自社のメイン事業の収益力を抜本的に強化するために、当事業所を含むメンバーで「経営改善チーム」を発足し、本格的な経営改善を実行していく。
  • 銀行に対して、「現状の借入金の返済猶予(=リスケジュール)」を依頼する。
    ⇒返済による資金流出を一時的にストップさせることで資金繰り状況を少しでも改善し、それにより手元に残る資金を元に上述の経営改善施策を計画通りに実行していく。

経営改善チームとしての地道な経営改善施策(IT活用)

発足させた「経営改善チーム」は、「社長/営業責任者/経理有識者/当事業所」の4名体制とし、早速以下の対応を実施していきました。

全て、「IT環境の構築」を含むアプローチで効率よく問題解決にあたった形となります。

【STEP①】「社内コミュニケーション」体制の構築

事業者さま社内では、基本的に「一部の人間同士での電話やプライベートLINE」だけでコミュニケーションがなされており、お互いに「言った言わないの水掛け論」や、「誰かがやると思っていて、結局誰もやらない」といった、業務上の非効率が日常的に発生する状況でした。

そこで、当事業所として、ローコストで導入出来るITツール「LINE WORKS」導入を支援しつつ、以下の業務環境(新たな社内文化)を実現させました。

  • 一部の人間同士でのコミュニケーションとせず、全社員同士で誰とでもコミュニケーションが出来る体制
    LINE WORKS導入により、社員一人一人にアカウントを付与した形(プライベートLINEで交流することに嫌悪感を示す社員もカバー)
  • LINE WORKSの機能「スケジュール管理」を活用し、各社員の動向を一元的に把握出来る体制
    各社員の予定を各々が把握出来る体制とすることで、お互いに業務の融通を利かせやすくした
  • LINE WORKSの機能「WEB会議機能」を活用し、日常的に「WEB会議」を実施する体制
    複数人で数分でも「会議」という形でコミュニケーションを取ることで、認識齟齬の発生防止や、結論をスムーズに導く体制を構築する狙い

【STEP②】「資金繰り/管理会計」体制の構築

前述の通り、事業者さまの資金繰り状況の見える化のために「資金繰り表」を作成しましたが、こちらを一過性の対応とするのではなく、「毎月、当たり前のように資金繰り状況を見える化する体制」とするように、内部の体制を整えることとしました。

  • 毎月「試算表」及び「資金繰り表」を作成する体制
    当事業所が作成したExcelフォームへ、各担当者がそれぞれの役割ごとに機械的に入力作業を行うことで、「月次のP/L(=試算表)」及び「月次の資金繰り表」を作成できる体制を構築。
  • 毎日「日繰り表」を作成する体制
    銀行とのリスケジュール(=返済猶予)が確定するまでは、「月末や月初を資金ショートせずに乗り切れるかどうか」という体制であったため、「日ごと」の資金繰り状況を、明確にするための、「日ごとの資金繰り表」即ち「日繰り表」を作成出来る体制を構築。
  • 売掛金の消込を正確に実施出来る体制
    資金繰り状況が非常に厳しいからこそ、取引先から正確に売掛金回収をしたかを確認する体制が必要と判断し、導入済業務システムの事情に沿う形での専用Excelフォームを構築し、回収確認(消込作業)を実施しやすい体制を構築。

【STEP③】「社内情報の一元管理/整理整頓」体制の構築

多くの事業者さまにおいて、「社内に大量の情報があふれて、皆、日々の仕事をこなすだけでも混乱しながら進めている」という状況は残念ながら一般的です。それは当然今回の事業者さまにおいても発生している状況であって、経営改善のために導いた各種の施策を効率よく進めるためには、早急にこの状況を改善する必要がありました。

そこで、「社内情報の一元管理/整理整頓」を目指し、以下の対応を実施しました。

  • 既存の「共有フォルダ」の整理
    既存の共有フォルダが「大量の情報でぐちゃぐちゃ」という状況であったため、まずはこちらを整理。
  • 新たな「共有フォルダ」の構築
    既存の共有フォルダは、あくまで社内ネットワーク上に構築された「社内業務専用の共有フォルダ」でしたが、外部の人間との交流も前提とした共有フォルダが存在しておらず、そちらを新たに構築。
  • 「社内ポータルサイト」の構築
    共有フォルダ上で整理した情報や、その他「頻繁に使うITサービス/WEBサイト」や「社員に常時見てほしい情報」を一元的にアクセス可能なプラットフォームとしての「社内ポータルサイト」を構築。

【STEP④】「営業/利益創出」体制の構築

事業者さま社内では、「社としての営業方針が固まっていない」「営業結果を振り返る場がない」「案件受注は出来ても利益を残す運営がなされていない」など、基本的な営業体制が出来上がっていない状況でした。

そこで、「営業/利益創出」体制の構築に向けて、以下の業務環境(社内文化)を実現させました。

  • 営業方針の体制と、社員への周知
    「この会社の強みは何か?ターゲット層はどこか?競合の状況はどうか?」といったマーケティング理論に基づいた考え方を取り入れながらの「営業方針」を作成し、それを(前述の)「社内ポータルサイト」上へ掲示。これにより、社内で全員が共通の認識の元に「自社を選んで頂くための営業活動」が実施出来る体制を構築。
  • 営業日報を記録する体制と、営業会議の実施
    日々の営業対応を振り返る場として。営業会議は前述の「LINE WORKS」にあるWEB会議機能を活用。
  • 案件ごとの原価把握体制(利益創出状況の見える化)
    案件のタイプごとに「どのような原価が発生しているか」を整理し、kintoneを活用して業務システムとしてそれを管理出来るシステムを構築。かつ、原価情報を(前述の)「社内ポータルサイト」上で掲示出来る体制を構築。これにより、社内で全員が「原価を意識しながらの活動」即ち「利益の創出を意識しながらの活動」を実施出来る体制を構築。

銀行との「リスケジュール(返済猶予)」交渉

上記施策の実行を継続するためにも、会社がまずは存続していないといけません。銀行に対して、既存の借入金返済の猶予(リスケジュール)を交渉する必要があります。

そのため、上記施策類を「経営改善計画書」としてまとめ、銀行に対して説明を行うこととしました。

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