IT支援の現場で「必ず」見る7つのあるある──根っこに潜む問題点

「最新版のファイルがどれか、誰も分からない……」
「せっかく入れたツールを、現場が使ってくれない……」
「AIを試したが、あまり会社は変わっていない……」

当事業所では、中小企業のIT支援に長年携わってきておりますが、業種が変わっても、規模が変わっても、行く先々で同じ場面に出くわします。

そして、これだけバラバラな会社で起きる「あるある」には、実は同じ根っこがあります。今日は現場で見てきた「あるある」をお話ししながら、最後に、その根っこに潜む問題点までお伝えします。

目次

業種も規模も違うのに、同じ場面に出くわす

私は日頃、中小企業さまのIT環境構築に、自分で手を動かしながら入っています。製造業もあれば、サービス業もあり、数名規模の会社もあれば、数十名規模の会社もあります。

それなのに、支援に入ると、どこでも決まって同じ場面に出くわします。しかも、これは会社が特別ダメだから起きるのではありません。むしろ、真面目に仕事に取り組んでいる会社ほど、自然とこうなってしまいます。そこには、はっきりとした理由があります。

その理由は最後にお話しします。まずは具体的な「あるある」を、3つの場面に分けて見ていきましょう。

【データ・ファイル編】「探すのに時間が溶ける」あるある

一つ目の場面は、データやファイルのまわりです。とても地味な話ですが、ここが会社の生産性を確実に下げています。私が必ずと言っていいほど出くわすのが、次の3つです。

あるある①:「最新版どれだっけ?」が口癖になっている

「見積書_最終」「見積書_最終_修正」「見積書_最終_修正版2」——こんなファイルが並んでいて、結局どれが本物なのか、開いてみないと分からない。多くの会社で、この「最新版探し」が日常になっています。

あるある②:同じような資料が、人の数だけ存在している

同じ内容の資料を、AさんもBさんもCさんも、それぞれ自分のパソコンに持っている。しかも少しずつ中身が違う。誰のものが正なのか、本人たちにも分からない。情報が一元化されていない典型です。

あるある③:退職した人しか分からないフォルダがある(属人化)

「このフォルダの中身、前任者しか分からないんですよ……」という声も、しょっちゅう耳にします。担当者が辞めた瞬間に、会社の大事な情報がブラックボックスになる。これは、業務が特定の個人に張り付いてしまう「属人化」の分かりやすい症状です。

会社全体で見ると、この「ただのファイル探し」にかけられている時間は、人件費に換算して毎月数十万円にのぼることも珍しくありません。しかも、散らかったデータの影響は、探す時間のロスだけではありません。次の2つの場面にも、そのまま響いてきます。

【ツール導入編】「入れたのに使われない」あるある

二つ目の場面は、ITツールの導入まわりです。ここでよく聞く声が、次の2つです。

あるある④:良さそうなツールを入れたのに、いつの間にか誰も使っていない

「業務効率化になると聞いて導入したツール、気づけば一部の人しか触っていない」——これは本当に、よく見る光景です。トップダウンで良いツールを入れても、現場では「新しいものを覚えるのが面倒」という空気が生まれ、いつの間にか使われなくなっていく。

あるある⑤:結局、現場は前のやり方に戻ってしまった

そして最終的に、高いお金を払って導入したはずのツールが、誰にも使われないまま塩漬けになる。経営者としては「あの投資は何だったのか」という気持ちになります。

この2つに共通するのは、「良いツールを入れれば、勝手に会社が良くなる」という期待が、そのとおりにはならなかった、という点です。DXに「これを入れれば万事解決」という魔法のツールは、残念ながら存在しないのです。

【AI活用編】「賢いはずのAIが、なぜか会社では回らない」あるある

三つ目の場面は、多くの経営者が今まさに直面している、AI活用まわりです。前提として、AIは「与えられたデータをもとに処理する道具」です。「Garbage in, garbage out」——汚れたデータを入れれば、汚れた結果しか出てきません。先ほどの散らかったデータが、ここで効いてきます。よく聞く声が、次の2つです。

あるある⑥:AIで自社システムを作ってみたら、かえって手間と不安が増えた

「AIを使えば、プログラミングの知識がなくても、例えば自社用の顧客管理システムのようなものが作れる」——そう聞いて試した経営者の方は、実際にいらっしゃいます。最初は形になります。ところが、いざ業務で本格的に使い始めると、次々と不具合が出る。一つ直すと、別のところが動かなくなる。まるでモグラ叩きです。しかも、中身がどう作られているのか本人にも分からないため、「これ、本当に使い続けて大丈夫なのか」という不安が消えません。「作れた」と「安心して使い続けられる」は、まったくの別物なのです。

あるある⑦:個人の作業は速くなったが、会社全体は何も変わっていない

AIを使いこなせる一部の人の業務は、確かに劇的に速くなった。ところが、会社を支える多くの従業員が日々向き合っている「主たる業務」は、置いてけぼりのまま。だから、会社全体としては何も変わった実感がない。派手なAI活用が、なぜか経営には効いていない、というギャップです。

7つの「あるある」の根っこに潜む、たった一つの問題点

ファイルが散らかる。ツールが使われない。AIが会社で回らない。一見バラバラなこれらの「あるある」ですが、根っこをたどると、たった一つの問題点に行き着きます。

それは——「畑を耕すことよりも、農具をそろえることに意識が向いてしまっている」ということです。

私はよく、フォルダ整理やデータ基盤の整備を「畑を耕すこと」に例えます。ツールやAIは、その畑に蒔く「種」であり、収穫に使う「農具」です。どれだけ良い種を蒔いても、どれだけ高性能な農具を揃えても、畑そのものが荒れていては、作物は育ちません。

ここまで見てきた「あるある」を、もう一度この視点で振り返ってみてください。

  • ファイル探しに時間が溶けるのは、畑そのものが荒れている——つまり、土台となるデータがまだ耕されていないから。
  • ツールが使われないのは、その荒れた畑に、いきなり農具(=ツール)を持ち込んだから。
  • AIが会社で回らないのは、同じ荒れた畑の上に、最新の農具(=AI)だけを乗せようとしているから。

つまり、順序が逆なのです。多くの会社は、まじめに「良い農具(=流行りのツールやAI)」を探しています。それ自体は、間違っていません。ただ、その前に耕すべき畑——つまり「会社全体でデータを溜める仕組み」——が、後回しになっている。だから、どこの会社でも同じ場面が起きるのです。

そして、もう一つ大事な視点があります。この「畑を耕す」という作業は、AIには任せきれない、という点です。試しに「共有フォルダの整理をAIにやらせれば早いだろう」と任せてみると、たいてい、かえって現場が混乱します。理屈の上ではきれいに整っても、「昔からこの構成じゃないと困る」「あの人の使い方に合わせてある」といった、その会社ならではの事情を、AIは読み取れないからです。

畑を耕すとは、その会社独自の事情・文化・人間関係を汲み取り、現場と経営の双方に自ら話を聞きに行きながら、地道に土をならしていく作業です。これは、極めて人間的な仕事です。だからこそ、IT化は突き詰めると、「ツールの問題」ではなく、「順序の問題」であり、そして「人と組織の問題」なのです。

この順序さえ間違えなければ、「あるある」の多くは、そもそも起こりません。今まさに心当たりがあるとしても、それは会社が特別なのではなく、ただ「耕す順番が後回しになっているサイン」です。

まとめ:その「あるある」は、あなたの会社の問題ではなく「順序」の問題

今日は、IT支援の現場で出くわす7つの「あるある」と、その根っこに潜む問題点——「畑を耕すことよりも、農具をそろえることに意識が向いてしまっている」——をお話ししました。

もし、この記事の「あるある」に一つでも心当たりがあったなら、それは会社がだらしないからではありません。真面目に仕事をし、まじめに「良いツール」を探してきた、その証でもあります。ただ、手をつける順番を、少しだけ入れ替えればいい。まず畑を耕す。土台となるデータ環境を整える。その上で、はじめてツールやAIという農具が、本来の力を発揮します。

畑を耕す作業は、地味です。しかし、この一歩が会社全体を強くする最短ルートだと、私は現場で確信しています。

「土台づくり=畑を耕す」から考えたい方へ

畑を耕す具体的な第一歩である「フォルダ整理」を実際にやってみたい方は、当事業所の「フォルダ整理コンサルティング」サービスをご覧ください。

さらに深く知りたい方へ

当事業所が、AIとどう向き合い、どんな形でAI環境構築を支援しているかは、こちらのページで詳しくご紹介しています。

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