なぜ、あなたの会社にはITツールが乱立・氾濫するのか?
AIツール、チャットツール、勤怠管理ツール、経費精算ツール——。業務を効率化しようと、さまざまなITツールを導入してきた会社は多いと思います。そしてそれら一つ一つは、しっかりと「これが正解だ!」と考えて導入を決めてきたものと思います。
ところが、気付いたら社内には沢山のITツールだらけになっていて……、部署同士で異なるITツールを使っていて……、全体で見ればすごく非効率に見える。そんな状態に心当たりはありませんでしょうか?このような状況は、「だらしのない会社」よりも、むしろ「真面目にITと向き合おうとした会社」に多いと感じます。
本記事では、「どうしてウチの会社は、ITツールが氾濫してしまうのか」という疑問に対し、その発生メカニズムからデメリットまでまとめます。ITツールが氾濫することの原因と厄介さが分かって初めて、対処のスタート地点に立てるはずです。
ITツールの氾濫は「一気に」ではなく「少しずつじわじわ」起こる
ITツールが氾濫する会社の多くは、「ダメな会社だから」ではありません。むしろ、ITに対して真摯に向き合おうと積極的になってきた会社がこうなりやすいという矛盾があります。例えば、「この部署のExcel作業が非効率だから、専用ツールを導入して解決させよう!」「情報共有をスムーズにして皆の負担を減らすべく、チャットツールを導入しよう」——そうやって目の前の課題を1つずつ向き合ってきた結果、ツールが増えるという状況に行き着きます。
当事業所が支援してきた中堅規模の会社でも、大企業においても、この流れは一般的です。課題解決のためにITツールを導入する、ここまでは前向きで良いものなのですが、問題はここからです。会社内の、いろんな部署で、それを行ってしまう。結果、「部署ごとの、それぞれ正しい判断」が積み重なり、会社全体で見ると、いつの間にか大量のITツールが氾濫している状態に行き着きます。
分かりやすい例が、チャットツールの乱立です。

A部署では、取引先の都合で、このチャットツールを導入します!



B部署は、昔から使っているこのチャットツールに慣れてしまっているから、引き続きそれを使います!



C部署は、プロジェクト管理業務が多く、プロジェクト管理機能に特化した新たなチャットツールが欲しいから、新しく導入しますね……




各部署で好き放題やる結果、気づけば社内に沢山のチャットツールが溢れかえる、といった事例です。
このように、「氾濫」は、ある日突然起きる災害ではなく、小さな判断(1つ1つは正しく見える判断)が積み上がった結果なのです。
「1つ1つは正しく機能していて、正解に見える」という落とし穴
しかし、厄介なのは、1つ1つのITツールは、それを使っている部署の人間からすると、「これは必要なITツールです」「このツールが一番です」という答えが返ってくるという点です。実際のところ、特定の業務に特化した専用ツールというものは、その分野においてはそれが一番というレベルであることが多く、どうしても、それを導入することが正解に見えてしまいます。
しかし、それはあくまで「話題とする、その機能だけに着目すれば」の話です。個々の業務で「一番高機能なもの」を選んでいれば正解に見えますが、全体で見ると「業務ごとに専用ツールへと分断され、氾濫したIT環境」が出来上がる訳で、そういう意味では正解ではありません。このように、一つ一つで見れば最適な結果なのに、会社全体で見ると非効率な状況、これを「個別最適」と呼びます。
そもそも「高機能なほど良い」という発想自体も、注意が必要です。多機能で高価なITツールを入れたものの、実際に使う機能はごく一部で、残りは宝の持ち腐れ。こうした「オーバースペック」な導入も、氾濫した社内ではよく起きています。
ITツールの氾濫が会社に与える悪影響(負債)
実際のところ、ITツールの氾濫は、単に「気持ち悪い」では済まされない、「経営上のリスク」であることを意識している経営者の方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
1つ目のリスクは、「無駄コスト」です。沢山のITツールが導入されていれば、コストがかさむことは誰にでもイメージがつくことでしょう。それだけならまだマシですが、もっとひどいのは「使われないまま放置されるITツールが出てくる可能性がある」という点です。導入したものの定着せず、一部の人もしくは誰も使っていない、それでも契約だけは続き、毎月のコストが出ていっている——そんなコストは無駄としか言いようがありません。
2つ目のリスクは、「部署ごとの分断(セクショナリズム)」です。同じ会社なのに、部署が違えば使うITツールも情報の置き場所もバラバラ。部署をまたいだ情報のやり取りや集計は困難で、そして「同じ会社なのに、違う会社が沢山あるように見える」という状況になり、業務上の非効率に留まらず、部署同士の交流が少なくなる、仲が悪くなる、という結果にも行き着きかねません。(セクショナリズムがITツール氾濫を引き起こすとも言え、ITツール氾濫がセクショナリズムを助長する、とも言える)
そして3つ目のリスクが「会社の経営状況を掴めなくなる」ことです。ITツールが増えれば、データもそのぶんあちこちに分散することとなります。例えば、「売上情報はこのITツールにあり、原価情報はあのExcelにあり、現場の状況はまた別のITツールに……」といった具合です。こうなると、会社全体の経営状況把握のために数字を集計したいといった場面の際に、その数値の集計のためだけに膨大な時間を要するということになります。すると、中小企業の場合は「手間なのでやらない」という結果に至り、大企業の場合は「その集計作業のために毎月大きな人件費をかけて対応する」という結果に至ります。
「じゃあ全部1つにまとめればいい」も、また違う
ここまで読んで来られた方なら、「ITツールを増やしすぎるのが問題なら、限られたITツールに統合していけば良いか」という発想に至った方も少なくないと思います。しかし、話はそう単純でもありません。実際は、「1つにまとめた方が良い場面」と、「まとめない方が良い場面」が、現実には両方あるからです。
たとえば当事業所では、汎用的な開発ツール(kintoneやGoogle Workspace)を使ってIT環境を構築することが多いのですが、その場合でも「何でもかんでも、そのツール1つで実現しよう」とは考えません。どんなツールにも苦手分野はあり、そこを無理に1つで押し通そうとすれば、かえって不自然で複雑で使い辛いIT環境が出来上がってしまうからです。そのツールの苦手分野は別の身近なツールで実現し、うまく組み合わせたり、時には「そもそもITツールに頼らない」という選択も交え、バランスよく環境構築することが求められます。
仮に「限られたITツールに統合する」ということが可能であったとしても、それを会社にそれぞれの部署で実際に働く方々がスムーズ賛成する訳がない、という点にも着目する必要があります。統合という方向が、理屈上は正しい正論であったとしても、正論がまかり通るほど会社組織は単純なものではありません。
大事なのことは、ツールの数を増やすことでも、無理やり1つに減らすことでもなく、「会社にとって最適な組み合わせ」を考え、かつ「そこに至る段取りを丁寧に組むこと」です。氾濫を「悪」と決めつけてその反動で「とにかく統一」に走れば、今度は「1つのツールに全業務を押し込んだ、無理のある環境」という別の失敗が待っています。氾濫か統一かの両極ではなく、その間にある「全体を見渡したうえでの、ちょうど良い組み合わせ」——これを目指すことが大事です。そしてその目指すべきゴールが見つかっても、それを各部署に押し付けようとせず、丁寧な説明や交渉、そういった段取りを組むことまで求められます。
【まとめ】ITツールの氾濫は、見過ごすべきではない
本記事でお伝えしたかったのは、ITツールの氾濫はどの会社にも起こり得る問題、それでいて放置するべきではない問題であるという点です。
かと言って、簡単に解決できる問題でもないことが、この問題の非常に厄介なところです。丁寧に「会社の全体像」「あるべき姿」を見極める力と、それでいて「各部署の方々、現場の方々に納得して頂くための丁寧な段取り」を組む力まで求められる、非常に難易度の高い対応です。それに立ち向かうためには、その道の専門家の力に頼ることが重要です。
もし今、「社内のツールが増えすぎて、どこから手をつければいいか分からない」とお悩みなら、それは珍しいことでも、恥ずかしいことでもありません。むしろ、まじめに取り組んできた会社ほどぶつかる課題です。会社全体を見渡したうえで、何をどう組み直すべきか——その入り口だけでも知りたい方は、お気軽にご相談ください。
プロへ相談してみたい方へ
「ITツールを氾濫させない、丁寧なIT環境構築」を目指す事業者さまは、当事業所の「IT環境構築」サービスをご確認ください。
土台から整えたい方へ
「ITツールの氾濫」解決のためには、まずは、業務環境業別の利益の見える化」を情報を守る第一歩は、まずは「事業別に存在する各種ファイル(データ)を、きちんと事業別に整理する」ところからです。ご興味のある方は、まずは当事業所による「フォルダ整理コンサルティングサービス」をご確認ください。
